- あだち充『みゆき』は、青春の“居心地の悪さ”を描いた名作
あだち充作品といえば野球漫画を思い浮かべる人が多い。
だが、そのイメージが定着する前に描かれた名作が『みゆき』だ。
本作は野球を扱わない。
その代わりに描かれるのは、
恋愛と家族、そして思春期特有の居心地の悪さである。
『みゆき』とはどんな作品か
『みゆき』は1980年代に連載された、あだち充の代表的恋愛漫画。
主人公は高校生の若松真人。
彼の周囲には「みゆき」と名のつく二人の女性がいる。
一人は、同級生の鹿島みゆき。
もう一人は、家族として一緒に暮らす妹・若松みゆき。
この設定だけを見ると、
少し刺激的な印象を受けるかもしれない。
しかし物語の本質は、決してそこではない。
恋愛よりも「距離感」を描いた物語
『みゆき』が特別なのは、
恋愛感情そのものよりも
人と人との距離感を丁寧に描いている点にある。
好きだという気持ちを、素直に言えない。
近すぎる関係だからこそ、踏み込めない。
その曖昧さが、物語全体に静かな緊張感を与えている。
派手な告白や劇的な展開は少ない。
だが、だからこそ一つひとつのやり取りが心に残る。
若さゆえの未熟さが、そのまま描かれている
登場人物たちは、決して完璧ではない。
自分勝手で、優柔不断で、ときに傷つけ合う。
それでも読者は、
彼らを嫌いになれない。
それは、この作品が
若さの未熟さを否定せず、そのまま描いているからだ。
誰かを選ぶことは、
同時に誰かを選ばないということ。
その重さが、静かに伝わってくる。
『タッチ』以前のあだち充を知る一冊
『みゆき』を読むと、
後の『タッチ』につながる作家性がはっきりと見えてくる。
・説明しすぎない演出
・余白を活かしたコマ割り
・言葉にしない感情の積み重ね
これらはすでに完成されている。
だからこそ『みゆき』は、
あだち充作品を深く知るための重要な一作と言える。
こんな人におすすめ
- 野球漫画以外のあだち充作品を読みたい人
- 恋愛漫画が好きだが、派手すぎる展開が苦手な人
- 思春期の揺れる感情を丁寧に描いた作品が好きな人
逆に、分かりやすい結論や爽快感を求める人には向かない。
だが、その曖昧さこそが『みゆき』の魅力だ。
気になった方は、まずは第1巻から読んでみてください。
『みゆき』の独特な空気感や、登場人物たちの距離感は、1巻だけでも十分に伝わってきます。
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まとめ|静かに心に引っかかり続ける物語
『みゆき』は、読み終えたあとに答えを与えてくれる作品ではない。
むしろ、
「あのとき自分ならどうしただろうか」
と考えさせられる。
それこそが、この漫画が長く読み継がれてきた理由だろう。
あだち充作品を語るうえで、
『みゆき』は決して外せない一冊である。


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